さくら映画のネタバレ・あらすじを徹底解説|ハジメの死と家族再生の意味とは?

さくら映画のネタバレ・あらすじをイメージした、静かな風景と家族再生の余韻を感じさせる雰囲気を表すイメージ画像 ドラマ

一匹の老犬が、壊れかけた家族をずっと見守っていた。2020年公開の映画『さくら』は、西加奈子のベストセラー小説を原作に、長谷川家という5人家族と愛犬サクラの歳月を丁寧に描いたドラマです。

長男の死をきっかけにバラバラになった家族、妹が隠し続けていた秘密、そして大晦日に訪れる奇跡のような出来事——。「ネタバレ込みで結末まで把握してから観たい」「ハジメの死の背景を整理したい」という方のために、あらすじから結末まで、物語の核心をできる限り丁寧にまとめました。

北村匠海・小松菜奈・吉沢亮という旬のキャストが集結した本作の世界観を、このページでしっかり整理してみてください。

  1. 映画『さくら』のネタバレ前に知っておきたい:この物語が描こうとしたこと
    1. 犬のサクラが「家族の幸せの象徴」である理由
    2. 「はじめレジェンド」とは何か——長男・ハジメの存在感
    3. 手紙を隠した理由——美貴の選択が招いたもの
  2. あらすじ:長谷川家の歳月とハジメの死まで
    1. 幸せな日々とサクラとの出会い——家族の全盛期
    2. 交通事故とハジメの変化——家族が崩れ始める瞬間
    3. ハジメの死と家族の崩壊——「ギブアップ」という言葉の重み
  3. 見どころと感想ポイント:この映画が問いかけるもの
    1. 「全肯定」というテーマと大晦日の奇跡
    2. 評価が分かれる理由——「ぶっ飛んだ内容」をどう受け取るか
    3. 犬の演技と主題歌「青のID」——作品世界を作り上げた要素
  4. 出演者・登場人物:長谷川家の5人とキャストの役割
    1. 北村匠海(長谷川薫)と吉沢亮(長谷川一)——兄弟を演じる二人
    2. 小松菜奈(長谷川美貴)——物語の核心を担うキャラクター
    3. 寺島しのぶ(長谷川つぼみ)と永瀬正敏(長谷川昭夫)——ベテラン二人が支える土台
  5. 補足:原作・スタッフ・制作背景について
    1. 西加奈子原作の位置づけ——「サラバ!」前の初期傑作
    2. 矢崎仁司監督の作家性——女性作家原作との親和性
    3. 上映情報と配信状況——最新情報の確認先
  6. まとめ
  7. 当ブログの主な情報源

映画『さくら』のネタバレ前に知っておきたい:この物語が描こうとしたこと

ここからネタバレを含みます。

「間違った選択をしてきた家族の話だと思うんです」——原作者の西加奈子さんは映画公開時のインタビューでそう語っています(CINRA.NETによる公開当時のインタビューより)。完璧な家族の美しい物語ではなく、失敗や恥、叶わなかった愛情が積み重なった歳月を、それでも肯定しようとする物語。それが映画『さくら』の核心だと読み取れます。

犬のサクラが「家族の幸せの象徴」である理由

物語の舞台は、大阪の長谷川家です。父・昭夫(永瀬正敏)、母・つぼみ(寺島しのぶ)、長男・一(吉沢亮)、次男・薫(北村匠海)、長女・美貴(小松菜奈)、そして愛犬のサクラ——この5人と1匹が長谷川家の全員です。

サクラは近所の家で生まれた子犬で、5匹の中でも一番小さく、頼りない存在でした。帰り道、美貴が花びらを拾って「この子が桜の花びらを産んだんや!」と興奮し、そのままサクラと名付けたのです。ふてくされていた美貴がサクラを抱っこした瞬間に愛情が芽生えるシーンは、長谷川家が一番輝いていた時代の始まりを示しています。

サクラは物語の中で薫の想像によって「おしゃべり」をします。「どうも初めまして、長谷川サクラです」と照れたり、大好きなタワシに興奮したり——場の空気をまったく読まないサクラの言葉は、どんなに重苦しい場面でも一瞬だけ家族を和ませる装置として機能しています。サクラは長谷川家の幸せだった時代の象徴であり、この犬が元気な間は、家族にまだかすかな光があることを示しているわけです。

「はじめレジェンド」とは何か——長男・ハジメの存在感

長男の一(ハジメ)は、長谷川家のヒーローでした。野球部のエースで、クラス中の女の子が好きになってしまうほどのカリスマ性を持ち、兄弟にとっても親にとっても誇りでした。薫は「ハジメ君の弟」と呼ばれ続けることに歯がゆさを感じながらも、兄を心から尊敬していました。

中でも妹の美貴は、ハジメへの思慕が人一倍強い子でした。小さい頃から片時も離れず、危険な遊びにも参加し「そんじゃそこらの男の子には負けない伝説」を残してきた美貴にとって、ハジメは兄という枠を超えた存在だったと読み取れます。ここで注目したいのが、美貴の行動がすでに幼少期から「兄への恋心」の性質を帯びていたという点です。それが後の悲劇の遠因となっていきます。

手紙を隠した理由——美貴の選択が招いたもの

ハジメに彼女・矢嶋優子(水谷果穂)ができたことが、美貴の心を少しずつ狂わせていきます。引っ越しで離れ離れになった二人が手紙で連絡を取り合うようになると、美貴はポストからその手紙を抜き取り始めました。さらに兄の筆跡を完璧に模写し、「好きな人ができました。もう電話をかけてこないでください」と優子に返信まで送っていたのです。

カラフルな封筒がぎっしり詰まった赤いランドセル——美貴が薫にその秘密を打ち明けた場面は、映画の中でも特に重い場面のひとつです。「遅いよ」と言いながら薫が美貴を殴ったのは、ハジメの孤独の遠因が妹にあったことへの怒りでした。美貴の行動は愛情ゆえでしたが、結果としてハジメから大切な人を奪い、彼の孤立を深める一因になったと見ることができます。

あらすじ:長谷川家の歳月とハジメの死まで

物語がどのように積み重なって「ハジメの死」へとたどり着くのか、ここでは長谷川家の歩みを整理します。

幸せな日々とサクラとの出会い——家族の全盛期

映画『さくら』の家族が抱える喪失や絆、再生へ向かう心の変化を表すイメージ画像

物語は、次男の薫が年末に実家へ帰省する場面から始まります。音信不通だった父が2年ぶりに戻ってくるという手紙を受け取り、サクラを見に帰るという「言い訳にもならない言い訳」を残して実家に向かう薫。庭では随分と太った母が庭いじりをしていて、かつてより随分と痩せたサクラが両目を白内障で白くしながらも薫に頭をすりつけてくる——この冒頭の静かな場面から、すでに長谷川家が変わってしまったことが伝わります。

薫の回想を通じて、かつての長谷川家の賑やかな日常が映し出されていきます。父が同級生のおかまバーに家族全員で訪れた珍事、母が嫉妬から夕食のおかずを捨てた夜、美貴が敵視するハジメの彼女・優子が徐々に長谷川家に溶け込んでいく様子。どれも「ちょっと変わっているけど、愛情で動いている」家族の姿です。この一連の回想が、のちの喪失をより重くする機能を持っています。

交通事故とハジメの変化——家族が崩れ始める瞬間

転機は突然やってきます。夏休みで帰省していたハジメが、コンビニに電池を買いに出かけた雨の夜のことでした。自転車で傘さし運転をしていたハジメは、猛スピードで走ってきたタクシーを避けきれずに衝突。下半身の筋肉と顔の右半分の表情を失いました。

1週間の昏睡から覚めたハジメは、自分の顔と体の変化に愕然とします。家族にとっては、生きていたことの喜びの方が大きかった。サクラも車椅子のハジメに駆け寄り、変わらずカッコイイという眼差しで見つめました。しかし「はじめレジェンド」として生きてきたハジメには、思い通りに動かない体と変わってしまった容姿に向けられる視線が、耐えがたいものでした。一時的に暴れる時期を経て回復の兆しを見せたものの、「心の中の神様が、最近は悪送球ばかり投げてくる」という言葉が示すように、疲弊は深まっていました。

ハジメの死と家族の崩壊——「ギブアップ」という言葉の重み

12月23日。サクラの散歩に出たまま帰らなかったハジメは、いつも散歩で立ち寄る公園の木で首を吊りました。薫と美貴がハジメの誕生日に買った、サクラの散歩用のリードで。ポケットには「この身体で、また年を越すのが辛いです。ギブアップ」と書かれた紙切れが入っていました。20歳と4か月でした。

葬儀の日、母は薫の手に爪痕が残るほど握りしめ続け、父は一度も動かず、美貴は焼香を食べたり棺桶を勝手に閉めたりと、それぞれが限界を超えた形で悲しみを表しました。その後、母はアルコールに逃げ、おしゃべりだったサクラもしゃべらなくなり、父はボストンバッグと美貴の赤いランドセルを持って家出をしました。ハジメがいなくなってから、長谷川家はまるで中心を失ったコマのように、ゆっくりと崩れていったのです。

見どころと感想ポイント:この映画が問いかけるもの

あらすじを押さえたところで、この映画が持つ独特の空気感と、見どころとして整理できるポイントを確認してみましょう。

「全肯定」というテーマと大晦日の奇跡

ハジメが亡くなってから4度目の年末、父が戻ってきて久しぶりに顔を揃えた大晦日。サクラが突然苦しみ始めました。パニックになる母と美貴、「病院に行こう」と言い出した父、そして薫が助手席に乗り込み、車は深夜の大阪を走り出します。父は「なんぼでもあるんや!」と叫びながらハンドルを回し続け、パトカーのサイレンまで聞こえてくる——このシークエンスは、映画全体のクライマックスです。

狭い車内で美貴がこれからの未来を語り出します。「好きな人ができたら好きって言う。いつまでおれるかわからんやろ?」「子供ができたら、生まれてきてくれてありがとう言うねん」。それを聞いた父と母も泣いていた。そしてサクラが、絶妙なタイミングで緑色のうんちを出します。警官が後部座席を覗き込んだ時、うんこまみれの美貴と恥ずかしそうにしっぽを振るサクラがいた。この場面は、西加奈子原作ならではの「きれいごとではない家族の愛情」の体現です。悲しみや汚さや滑稽さが入り混じったまま、家族は前に進もうとしています。

評価が分かれる理由——「ぶっ飛んだ内容」をどう受け取るか

本作への評価は、実際のところ大きく分かれる傾向があります。「矢崎監督の演出が素晴らしい」「家族に会いたくなる映画」という肯定的な見方がある一方で、「モノローグが過剰で作劇が単調」「価値観が合わないと入り込めない」という批判的な意見も少なくありません。

特に美貴というキャラクターへの反応は二極化しやすいと読み取れます。手紙を盗んで返信まで偽装したことが、ハジメの孤立を深めた一因であることは否定できません。一方で、矢崎監督は「愛が動機なら、やってはいけないことなんて何ひとつない」という姿勢で撮影に臨んでいたとされており(公開時の関連記事より)、美貴の行動も「歪な愛の形」として提示されていると読み取ることができます。どちらの解釈が正しいというよりも、複数の見方が成立する作品として受け取るといいでしょう。

犬の演技と主題歌「青のID」——作品世界を作り上げた要素

愛犬サクラを演じた犬(本名:ちえ)の演技も、本作の重要な見どころのひとつです。特に老犬のサクラが薫に頭をすりつける場面や、大晦日に家族の膝の上で苦しむ場面は、訓練されたとは思えない自然さで撮られています。主題歌の「青のID」は東京事変が本作のために書き下ろした楽曲で、「再生」というテーマとよく合っています。実際に2020年に活動を再開した東京事変が担当したことで、映画のテーマとバンドの状況が重なるという読み取りもできます。

出演者・登場人物:長谷川家の5人とキャストの役割

それぞれのキャストが演じた人物の背景を整理すると、映画の見方がさらに深まります。

北村匠海(長谷川薫)と吉沢亮(長谷川一)——兄弟を演じる二人

長谷川家の次男・薫を演じた北村匠海さんは、本作でストーリーテラーとしての役割を担います。兄の後ろを歩いてきた薫が、ハジメを失い、家族のそれぞれの痛みを目の当たりにしながら、もう一度「生きる意味」を探していく変化を内向きのトーンで表現しています。台詞よりもモノローグが多い構成上、全体を通して薫の声と視線が物語を引っ張る設計になっています。

長男・ハジメを演じた吉沢亮さんは、カリスマ性のある輝きと、事故後の絶望の両方を担わなければならない難役でした。スポーツ万能で誰もが惹かれるハジメが車椅子生活になり、少しずつ「ギブアップ」へと向かっていく過程は、2020年前後の芸能界での出来事とも重なって見えた方が少なくなかったようです。ハジメの存在感は、彼が登場しなくなってからも家族全員の心に残り続けます。

小松菜奈(長谷川美貴)——物語の核心を担うキャラクター

本作で最も複雑な役を担ったのが、小松菜奈さん演じる美貴です。幼少期から兄への異常なほどの執着を見せ、優子への嫌がらせ、手紙の盗用と偽造、葬儀での奇行——美貴の行動は、一般的な倫理観とは大きく外れています。それでも映画が美貴を「悪役」として断罪しないのは、彼女のすべてが「ハジメを愛することから生まれた」という文脈で描かれているからです。

大晦日の車内で美貴が語り出す「これからの未来」のシーンは、そんな美貴が初めて過去を手放し、前を向こうとした瞬間として見ることができます。感情の振れ幅が大きく、撮影上も難しかったであろうこの役を小松菜奈さんが演じたことで、美貴の「歪さ」が一種の切なさとして伝わる仕上がりになっています。

寺島しのぶ(長谷川つぼみ)と永瀬正敏(長谷川昭夫)——ベテラン二人が支える土台

映画『さくら』の切なさや家族の再生を感じさせる風景や雰囲気を表すイメージ画像

両親を演じた寺島しのぶさんと永瀬正敏さんは、若手キャスト陣の激しい感情の動きを支える「重し」として機能しています。寺島しのぶさんが演じる母・つぼみは、どんな状況でも明るく振る舞おうとしながらも、アルコールに逃げてしまう弱さも持っています。永瀬正敏さんが演じる父・昭夫は、家出という最悪の選択をしながらも、大晦日に「病院に行こう」と最初に言い出す人でもある——この二人が「良い親」でも「悪い親」でもなく、ただ不完全な人間として描かれている点に、作品の誠実さが出ていると感じます。

補足:原作・スタッフ・制作背景について

物語の背景をさらに理解するために、原作と制作スタッフについても整理しておきます。

西加奈子原作の位置づけ——「サラバ!」前の初期傑作

原作は、西加奈子さんが2005年に発表した同名小説です。2015年に「サラバ!」で直木賞を受賞するより前、まだ若い作家だった頃の作品で、デビュー作「あおい」に続く2作目にあたります。累計55万部を突破しているベストセラーで、西加奈子作品の映画化としては「きいろいゾウ」「円卓」「まく子」に続く4作目の映画化だったことが、松竹の公式ページに記載されています。

小説と映画では一部エピソードの順番が変わっているとされていますが、原作の持つ「間違った選択を重ねた家族が、それでも生きていく」という核心的なテーマは映画にも引き継がれています。西加奈子さんは「生きていく以上は死ぬまで自分を肯定する、という話」と語っており(公開当時のインタビューより)、これが映画全体のトーンを決めている指針だと読み取れます。

矢崎仁司監督の作家性——女性作家原作との親和性

監督を務めた矢崎仁司さんは、「ストロベリーショートケイクス」「スイートリトルライズ」「太陽の坐る場所」「無伴奏」など、女性作家原作の映画化を多く手がけてきた監督です。人間の複雑な感情、とりわけ倫理的には説明しにくい愛情を丁寧に映像化することに長けています。

矢崎監督は本作について「私の映画史がすべて入っている」と語り、誰にも監督させたくないと思いながら脚本化を進めたとされています(松竹公式ページより)。実際、脚本の朝西真砂さん、撮影の石井勲さんなど、監督の信頼するスタッフが揃って参加しています。なお、本作はオール山梨ロケで撮影されたことも公開当時に報じられており、作品全体の静かで落ち着いた空気感はロケ地の風土と無関係ではないかもしれません。

上映情報と配信状況——最新情報の確認先

本作は2020年11月13日に松竹配給で全国公開され、上映時間は119分です。映倫区分はGレーティングとされていますが、近親愛的な感情の描写や自死の場面が含まれますので、視聴の際は内容を事前に確認されることをおすすめします。配信状況や料金については変動することがありますので、最新情報はeiga.com(映画.com)の作品ページでご確認ください。

映画『さくら』(2020)基本情報まとめ
公開:2020年11月13日(日本)
上映時間:119分
原作:西加奈子「さくら」(小学館刊)
監督:矢崎仁司 / 脚本:朝西真砂
撮影:石井勲 / 音楽:アダム・ジョージ
主題歌:東京事変「青のID」
配給:松竹
©西加奈子/小学館 ©2020「さくら」製作委員会
  • 松竹公式データベース(shochiku.co.jp)で作品情報・キャストを確認できます
  • eiga.com(映画.com)の作品ページで最新の配信情報を確認できます
  • 国立映画アーカイブ(NFAJ)では日本映画の保存・研究に関する情報を公開しています
  • 映倫(映画倫理機構)公式ページでレーティングの詳細を確認できます
  • 西加奈子原作の詳細は小学館の公式ページをご参照ください

まとめ

映画『さくら』は、「間違った選択を重ねた家族が、それでも生きていく」ことを一匹の犬の視点で静かに描いた作品です。ハジメの死、美貴の秘密、父の失踪——どれも美しい答えは出ないまま、それでも大晦日の車の中で家族は少しだけ前を向きます。

まず試してほしいのは、本作を観る前か観た後に、原作小説(西加奈子「さくら」小学館刊)を手に取ってみることです。映画では描ききれなかったエピソードの補完として読むと、長谷川家への理解がさらに深まります。

美しくない家族が、美しくない形で愛し合っている。そんな物語が、今日も誰かの心に刺さっているかもしれません。ぜひこの機会に、長谷川家の歳月を一緒にたどってみてください。

当ブログの主な情報源