ため息をつきながらソファに沈みこんで、「もうちょっとだけ誰かに背中を押してほしい」と思うことは、誰にでもあります。そんな夜に、映画はいちばんそっと寄り添ってくれる友人のひとりです。
今回は、女性が前向きになれる映画を5本まとめました。仕事で悔しい思いをした日、自分に自信が持てない日、このままでいいのかと立ち止まった日、それぞれの気分にあわせて選べるよう、テーマの異なる作品を整理しています。ネタバレなしの範囲で、どんな気持ちのときに観るとハマりやすいかも一緒にお伝えします。
公開年・監督・キャストは、複数の情報源で確認できた範囲で記載しています。配信状況は変わる場合があるため、最新情報は各ストリーミングサービスの公式ページでご確認ください。
女性が「前向きになれる映画」を選ぶ3つの基準
まず、今回の5本を選ぶにあたって整理した基準を共有しておきます。どんな映画を選ぶかによって「観たあとの気持ち」がかなり変わるため、この視点を持っておくと自分にあった1本が見つけやすくなります。
「主人公が変わっていく」映画かどうか
前向きになれる映画の多くに共通しているのは、主人公が物語を通して何かを乗り越えたり、自分の価値観を更新したりする「変化の物語」であるという点です。例えば「最初はうまくいかなかったけれど、気づいたら自分の力でここまで来た」という展開は、観ているこちら側にも「自分もそうなれるかも」という感覚をじわっと与えてくれます。逆に、主人公が終始受け身のままで何も変わらない映画は、観終わったあとに「楽しかった」とはなっても、前向きな気持ちは生まれにくいことがあります。今回紹介する5本は、いずれも主人公が何らかの形で変化・成長を見せる作品です。
「共感できる悩み」が描かれているかどうか
仕事でうまくいかない、自信が持てない、人間関係がしんどい──そういった「あるある」な悩みが丁寧に描かれている映画は、前向きになれる確率が高いと感じます。「こんな人いるよね」「私もこういうとき悩んだな」と自然に共感できると、主人公の選択が自分ごとに見えてきます。具体的には「職場での理不尽さ」「自分らしさとの折り合い」「他人の目を気にしすぎる気持ち」などを描いた作品が、女性の視聴者から繰り返し支持されている傾向があります。
「観た後のトーン」は明るいかどうか
前向きになれるといっても、作品によって後味はかなり違います。涙が出るけれど最後はすっきりする「感動系」、笑いながら元気になれる「コメディ系」、じんわりと自己肯定感が高まる「じっくり系」など、気分によって合うトーンは変わります。今回は、それぞれのトーンが異なる5本を選んでいるので、今の自分の気分に近いものを選ぶといいでしょう。
仕事で悔しい思いをした日に観たい映画2本
3つの基準を押さえたところで、いよいよ具体的な作品を紹介していきます。まず最初に取り上げるのは、「仕事のしんどさ」を正面から描いた作品です。職場での理不尽、自分の実力への疑問、仕事と私生活のバランスに迷う感覚。そういったものを「わかるわかる」と受け止めてくれる映画は、観終わったあとにお腹の底からやる気が湧いてくることがあります。
『プラダを着た悪魔』(2006年・監督:デヴィッド・フランケル)
女性が前向きになれる映画として、複数の調査やランキングで繰り返し上位に挙がっているのがこの作品です。ジャーナリスト志望のアンディ(アン・ハサウェイ)が、ファッション誌の鬼編集長ミランダ(メリル・ストリープ)のアシスタントになるところから物語は始まります。ファッションには無縁だったアンディが、理不尽な要求をこなしながら少しずつ変わっていく姿は、「職場で悔しい思いをしたことがある人」なら自然と重なる部分があるはずです。
原作はローレン・ワイズバーガーによるベストセラー小説で、著者自身の実体験が基になっているとされています(Wikipediaより確認)。映画は2006年に米国公開、日本では2006年11月18日公開、世界興行収入は約3億2670万ドルとされています(Wikipediaより確認)。注目したいのは、「仕事を頑張ることで自分が変わる一方で、大切なものを失いかけるかもしれない」という葛藤も丁寧に描いている点です。単純な成功物語ではなく、そのバランスの取り方を主人公自身が最後に選び取るラストが、多くの女性から支持されている理由とも言えます。
Q1. 仕事に興味のない分野でも楽しめますか?
A1. ファッション業界が舞台ですが、中心テーマは「職場での成長と葛藤」なので、業界への知識は不要です。むしろ仕事全般への共感を呼ぶ作品です。
Q2. 「鬼上司もの」として重くなりすぎませんか?
A2. テンポよく進む展開とオシャレな映像で、重苦しくなりすぎない仕上がりになっています。クスッと笑えるシーンも随所にあります。
- 2006年米国公開・日本公開同年11月、監督はデヴィッド・フランケル(Wikipediaより確認)
- 主演はアン・ハサウェイ・メリル・ストリープ・エミリー・ブラントほか(Wikipediaより確認)
- 「仕事の理不尽さとどう向き合うか」を考えたいときにとくに響く作品
- 最新の配信情報は各ストリーミングサービスの公式ページでご確認ください
『マイ・インターン』(2015年・監督:ナンシー・マイヤーズ)
ニューヨークのファッション系スタートアップでCEOとして奮闘する女性ジュールズ(アン・ハサウェイ)が、40歳年上のシニアインターン、ベン(ロバート・デ・ニーロ)と出会い、仕事もプライベートも丁寧に見直していく物語です。「バリバリ働いているけれど、なんか空回りしている気がする」「仕事と家庭のどちらかを諦めなければいけないのか」という疲れを感じている方に、とくに刺さる内容になっています。
監督・脚本・製作はナンシー・マイヤーズ(Wikipediaより確認)。2015年公開のアメリカ映画です。この映画の面白さのひとつは、「強い女性主人公」を描きながらも、彼女が弱さや迷いを抱えている場面も丁寧に映している点です。「完璧に見える人でも悩んでいる」というリアルさが、共感のポイントになっています。ベンが発する穏やかなアドバイスは、観ているこちらにも「ちょっと立ち止まって考えてみようかな」という気持ちを自然に促してくれます。仕事でがんばりすぎて疲れた日の夜に、温かいドリンクと一緒に観るのにぴったりな1本です。
- 2015年公開、監督・脚本はナンシー・マイヤーズ(Wikipediaより確認)
- 主演はアン・ハサウェイ・ロバート・デ・ニーロ(Wikipediaより確認)
- 「がんばりすぎている」と感じるときに観ると、じんわり肩の力が抜ける作品
- 最新の配信情報はWarner Bros.公式サイト等でご確認ください
自信をなくしたとき、自分らしさを取り戻したいときに観たい映画2本
仕事系の2本を確認したところで、次は「自分自身」への向き合い方をテーマにした作品を見ていきましょう。「他人の評価ばかり気になってしまう」「本当にやりたいことが見えなくなってきた」そんなときに、主人公が自分の価値観を信じて進む姿は、不思議と「私も私のままでいいのかも」という感覚を取り戻す手助けをしてくれます。
『キューティ・ブロンド』(2001年・監督:ロバート・ルケティック)
「ブロンドだから頭が悪い」という偏見をはねのけ、名門ハーバード大学のロースクールに進学した女の子、エル・ウッズ(リース・ウィザースプーン)の物語です。最初のきっかけは「失恋した元カレを取り戻したい」という動機なのですが、物語が進むにつれて彼女は「自分の力で何かを成し遂げる喜び」に気づいていきます。「周りに馬鹿にされても、自分を信じてやり抜く」という展開が、観る人に「自分も諦めなくていいんだ」という気持ちを届けてくれます。
2001年公開のアメリカ映画で、監督はロバート・ルケティック(Wikipediaより確認)。主演のリース・ウィザースプーンがエネルギー全開で演じるエルのキャラクターは、陽気でひたむきで、どこか可愛らしく、見ているだけで元気が伝染してきます。「女の子らしさを捨てずに、頭も使って、自分の軸をぶらさない」という主人公のあり方は、現代においても共感を呼び続けています。思いっきり笑いながら元気をチャージしたい日に向いている1本です。
- 2001年公開、監督はロバート・ルケティック(Wikipediaより確認)
- 主演はリース・ウィザースプーン(Wikipediaより確認)
- 「自分らしさを曲げたくないけど、うまくいかない」と感じるときにとくに響く
- 最新の配信情報は各ストリーミングサービスの公式ページでご確認ください
『アメリ』(2001年・監督:ジャン=ピエール・ジュネ)
ひとりでいることに慣れていて、自分から踏み出すのが怖いアメリ(オドレイ・トトゥ)が、周囲の人たちに小さな幸せをそっと届けながら、少しずつ自分の殻を破っていく物語です。「好きな人がいるのに、なかなか近づけない」「人と深く関わることが苦手」という感覚を持っている方には、とくに自分ごととして受け取れる場面が多いでしょう。
2001年公開のフランス映画で、監督はジャン=ピエール・ジュネです(複数ソースにて確認)。パリのモンマルトルを舞台にした映像の色彩は独特で、夢の中にいるような感覚が続きます。前向きになれる映画のなかでは珍しく「おとなしくて内向きな主人公」が中心にいるため、「活発な主人公には共感しにくい」という方にもすんなり入っていける作品です。観終わったあとに「ちょっと、誰かに何かをしてあげたくなる」という温かい気持ちが残るのも、この映画ならではの後味です。
- 2001年公開、監督はジャン=ピエール・ジュネ(複数ソースにて確認)
- 主演はオドレイ・トトゥ(複数ソースにて確認)
- 「人と深くつながることが怖い」という感覚を持つ方にとくに刺さる作品
- 最新の配信情報は各ストリーミングサービスの公式ページでご確認ください
女性同士の友情や連帯に元気をもらいたいときに観たい映画
自分と向き合う作品を2本見てきましたが、もうひとつ大切な「前向きになれる軸」があります。それは、女性同士がともに動く、支え合う、あるいは競い合いながら高め合うという「関係性の力」です。ひとりの主人公が頑張る物語とはまた違った、複数の女性が画面に揃うことで生まれるエネルギーが、特定の場面で非常に響くことがあります。
『ドリーム』(2016年・監督:テオドア・メルフィ)
1960年代のアメリカ航空宇宙局(NASA)を舞台に、黒人女性数学者たちが宇宙開発を支えた実話を基にした作品です。キャサリン・ジョンソン、ドロシー・ヴォーン、メアリー・ジャクソンという3人の女性(タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイが演じる)が、人種差別と性差別が色濃く残る環境の中で、自分たちの実力でそれを切り開いていく姿を描いています。
2016年公開のアメリカ映画で、監督はテオドア・メルフィです(複数ソースにて確認)。「理不尽な壁にぶつかったとき、どう向き合うか」という問いをそのまま体現しているような映画で、観終わったあとに「今の自分の悩みって、まだ諦める理由じゃないかもしれない」という感覚が残ります。感動系でしっかり泣きたいという方にもおすすめできる1本です。実話を基にしているため、エンドロールで実際の3人の写真が紹介されるシーンも印象的です。
①『プラダを着た悪魔』2006年/監督:デヴィッド・フランケル/主演:アン・ハサウェイ、メリル・ストリープ
②『マイ・インターン』2015年/監督:ナンシー・マイヤーズ/主演:アン・ハサウェイ、ロバート・デ・ニーロ
③『キューティ・ブロンド』2001年/監督:ロバート・ルケティック/主演:リース・ウィザースプーン
④『アメリ』2001年/監督:ジャン=ピエール・ジュネ/主演:オドレイ・トトゥ
⑤『ドリーム』2016年/監督:テオドア・メルフィ/主演:タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ
※配信状況は変わる場合があります。最新情報は各サービス公式ページでご確認ください。
- 2016年公開、監督はテオドア・メルフィ(複数ソースにて確認)
- 実話を基にした作品であり、エンドロールでも実在の人物が紹介される
- 「今の理不尽に諦めたくない」という気持ちがあるときにとくに刺さる
- 最新の配信情報は各ストリーミングサービスの公式ページでご確認ください
5本の選び方:今の気分で選ぶガイド
ここまで5本を紹介してきましたが、前向きになれる映画は「今の自分の状態」によって効果が変わります。同じ作品でも、見るタイミングによって受け取り方はかなり違うものです。そこで最後に、今の気分と状況から選ぶための簡単な整理をしておきます。
気分が落ちているとき・何もやる気が出ないとき
こういったときは、「重くなりすぎないけど、主人公がしっかり動いている映画」が向いています。具体的には『プラダを着た悪魔』や『キューティ・ブロンド』がおすすめです。展開のテンポが速く、ファッションや映像も目を楽しませてくれるため、頭をあまり使わずに観ていられます。気づいたら主人公を応援していて、「私も少し動いてみようかな」という気持ちが自然に湧いてくる構造になっています。特に『キューティ・ブロンド』は、笑いながら元気が出るタイプの作品なので、どんよりした気分のときに効果的です。
仕事で空回りしている・自分を見失いかけているとき
このタイミングには、じっくり染み込んでくる作品が合います。『マイ・インターン』はそういった状況にある女性から特に支持が高く、「何度観ても元気をもらえる」という声が多い作品です。テンポはゆっくりめですが、だからこそ台詞のひとつひとつが丁寧に届いてきます。また『アメリ』は「人と深く関わることへの戸惑い」を感じているときに、静かに背中を押してくれる作品です。どちらも観終わったあとの余韻が心地よく、気持ちの整理がしやすいタイプの映画です。
しっかり感動して泣きたい・理不尽に向き合いたいとき
がっつり感情を動かしたいときや、「今の自分の壁なんてたいしたことない」と思えるような映画が欲しいときには『ドリーム』がぴったりです。実話であることと、3人の主人公それぞれに異なる悩みと強さがある点が、観る角度を豊かにしてくれます。「自分に近い主人公が必ず一人はいる」という感覚が持てるため、よりリアルに感情移入できます。泣いた後にすっきりして、また明日から動けそうな気持ちになりたい日に向いています。
Q1. 今回紹介した映画は字幕・吹き替えどちらで観るのがおすすめですか?
A1. どちらでも楽しめますが、俳優の演技のニュアンスを細かく味わいたい方は字幕版がおすすめです。特に『プラダを着た悪魔』のメリル・ストリープの低いトーンの台詞は、原語で聞くと独特の迫力があります。
Q2. 邦画でも前向きになれる映画はありますか?
A2. もちろんあります。今回の特集は洋画に絞りましたが、邦画の前向き映画については別記事で整理予定です。
- 今の気分に合わせた選び方:笑いたいなら『キューティ・ブロンド』、じっくり染み込ませたいなら『マイ・インターン』
- しっかり泣いてリセットしたいときは『ドリーム』がとくに向いている
- 繰り返し観たいと感じたら、それが今の自分に一番響いた作品のサインです
- 映画作品の基礎データ確認には国立映画アーカイブ(NFAJ)もご活用ください
まとめ
前向きになれる映画は、「すごい主人公の物語」である必要はありません。悩んで、迷って、それでも動いている人の姿が、いちばんそっと背中を押してくれます。今回紹介した5本は、それぞれ違う種類の「前向き」を描いていますが、どれも観た後に「よし、もう少しやってみようかな」という気持ちが生まれやすい作品です。
まず1本だけ選んで観てみてください。今の自分の気分に一番近そうな作品をひとつ選ぶだけでいいです。全部観なくても、1本がきっかけになれば十分です。配信サービスや視聴方法については、各サービスの公式ページで確認してみてください。
映画はいつでも、何度でも、あなたの味方になってくれます。ぜひ今夜の自分へのご褒美に、1本選んでみてください。

